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原子核物理 & 原子力工学用語集

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英数字
ア行カ行サ行タ行ナ行
ハ行マ行ヤ行ラ行ワ行


英数字

BWR

沸騰水型炉のこと。
Boiling Water Reactorの略。


ECCS

緊急炉心冷却装置のこと。
Emergency Core Cooling Systemの略。


FBR

高速増殖炉のこと。
Fast Breeder Reactorの略。


MOX燃料

MOX燃料とは、使用済み核燃料から再処理で取り出したプルトニウムをウランと混ぜた核燃料である。 プルサーマル、高速増殖炉用の燃料として使用される。
MOXとはMixed OXideの略。


PWR

加圧水型炉のこと。
Pressurized Water Reactorの略。


X線

X線とは、高速の電子が金属に衝突することにより発生する放射線である。


ギリシャ文字

α線

α線とは、放射性核種のα崩壊に伴い、原子核から高速で放射されるヘリウムの原子核(He)のことである。

α崩壊

陽子2個、中性子2個から構成される核子のカタマリ(Heの原子核)をα粒子といい、α粒子が高速で放射されたものをα線という。


β線

β線とは、β崩壊に伴い、原子核から放射される電子または、陽電子のことで、放射線の一種である。

β+崩壊

ベータ崩壊のうち、陽電子が放射されるものをベータプラス崩壊という。

β崩壊

原子核がβ線とニュートリノ(および反ニュートリノ)を放出して、他の原子核になる現象をβ崩壊という。

β-崩壊

ベータ崩壊のうち、電子が放射されるものをベータマイナス崩壊という。

γ線

α崩壊、β崩壊に伴い、原子核で余剰となったエネルギーが電磁波として放射されたものがγ線である。


ア行

アクチニウム系列

アクチニウム系列は、ウラン235から始まり鉛207に至る崩壊系列である。
アクチニウム系列に属する核種は質量数を4n+3で表すことができる。このため4n+3系列ともいう。


アルファ線

α線とは、放射性核種のα崩壊に伴い、原子核から高速で放射されるヘリウムの原子核(He)のことである。

アルファ崩壊

陽子2個、中性子2個から構成される核子のカタマリ(Heの原子核)をα粒子といい、α粒子が高速で放射されたものをα線という。

イオン化

物質中を通過する放射線は、経路上にある原子の軌道電子をはじき飛ばす。
これにより、この原子は陽イオンと電子に分離され現象をイオン化という。


ウラン

ウランは、原子番号92の元素で天然に3種の同位体を持つ。



ウラン235

ウラン235は、ウランの同位体である。
92個の陽子と143個の中性子を持つ。

ウラン235は中性子を吸収すると分裂し、さらに2〜3個の中性子を放出する。
このため、ウラン235は核分裂連鎖反応に利用される。

ウラン235は天然ウラン中に0.72パーセントしか存在しない。
このため天然ウランをそのまま核燃料として利用することはできない。
ウラン235の比率をアップすることを「濃縮」という。

アクチニウム系列はウラン235から始まる崩壊系列である。



ウラン238

ウラン238は、天然ウランの同位体のうち最も存在比が大きい(99.284%)
原子炉の中ではウラン238は分裂しない。いわゆる「燃えないウラン」である。

ウラン系列はウラン238から始まる崩壊系列である。


ウラン系列

ウラン系列は、ウラン238から始まり鉛206に至る崩壊系列である。
ウラン系列に属する核種は質量数を4n+2で表すことができる。このため4n+2系列ともいう。


エックス線

X線とは、高速の電子が金属に衝突することにより発生する放射線である。


カ行

ガイガーカウンター

ガイガーカウンターとは放射線の量を表示する装置である。
ガイガー・ミュラー計数管、GM管ともいう。


壊変系列

原子核が崩壊して他の原子核に変化しても、その原子核が不安定なら、さらに崩壊する。
不安定である限り崩壊が繰り返し、安定な原子核になったところで崩壊が終了する。
このような一連の崩壊の順序を崩壊系列という。壊変系列ともいう。


崩壊系列には以下の4種が存在する。

  • トリウム系列
  • ウラン系列 (ラジウム系列)
  • アクチニウム系列
  • ネプツニウム系列

核子

中性子と陽子をまとめて核子という。

中性子と陽子は相互にパイ中間子を放出・吸収することによって、
中性子→陽子
陽子→中性子
のように状態が変化する。

「中性子」と「陽子」は「核子の種類」を指す言葉ではない。
「核子の状態」を表現する用語なのだ。



核燃料

原子炉内でエネルギー源として利用される材料を核燃料という。

核燃料サイクル

採鉱されたウランから核燃料を生成し、使用後も、まだ使える核燃料を使用済核燃料の中から回収して、再度原子炉に投入する。
このように核燃料としてのウランを循環させる一連のプロセスを「核燃料サイクル」という。


核分裂

原子核が二つ以上の軽い原子核に分裂することを核分裂という。
一般に原子核崩壊は核分裂に含めない。

例えばウラン235に中性子が突入すると、ウラン235は2つの原子核に分裂する。
このとき、2〜3個の高速中性子が生じる。
核分裂
この高速中性子が減速して他のウラン235に突入すれば、このような核分裂が連続して発生する。
これが原子炉の原理である。


ガンマ線

α崩壊、β崩壊に伴い、原子核で余剰となったエネルギーが電磁波として放射されたものがγ線である。



キャスク

使用済燃料を輸送、貯蔵するための容器。放射線を遮蔽する。
キャスク(Cask)とは元々、ワイン等のアルコール飲料を入れる容器を指す言葉である。



クーリッジ管

真空放電管の一種。



クルックス管

真空放電管の一種。
加熱されたフィラメントを持っていない。

電子やエックス線はクルックス管を用いた実験で発見された。


軽水炉

減速材に軽水(通常の水)を利用するタイプの原子炉を軽水炉という。
軽水炉には核燃料として低濃縮ウラン燃料を装荷する。

これに対して重水(分子中に重水素や三重水素を含む水)を利用するタイプの原子炉が重水炉だ。
核燃料として天然ウランを装荷する。


原子核

原子の中心部分が原子核だ。
原子核は陽子と中性子から構成される。
原子は原子核、その周囲を取り囲む電子から構成される。


原子核壊変

不安定な状態にある原子核は、時間の経過とともに放射線を出して他の原子核へと変化する。
これを「原子核崩壊」または「原子核壊変」という。


原子核崩壊

不安定な状態にある原子核は、時間の経過とともに放射線を出して他の原子核へと変化する。
これを「原子核崩壊」または「原子核壊変」という。


原子力

原子核変換に伴って生じるエネルギーを利用する技術や方法のこと。


原子力発電

原子力を利用して発電すること。
原子力で得られたエネルギーで水を沸騰させ、その蒸気でタービンを回して発電する。
原子力電池も電力を発生するが、原子力発電には含めない。


原子力の日

1963年10月26日に、日本初の原子力発電が成功した。
このことから毎年10月26日が原子力の日になった。


原子炉

原子炉とは、原子核の分裂を利用して、熱を生成させる設備である。


減速材

ウラン235の核分裂に伴って放出される中性子は高速中性子である。
高速中性子が、次のウラン235に衝突しても原子核は分裂しない。

次の核分裂を引き起こすためには高速中性子を減速させなくてはならない。

原子炉内部で核分裂に伴って放出される中性子を減速させる物質を減速材という。


高速増殖炉

高速中性子を利用しながら核燃料を増殖させるタイプの原子炉を高速増殖炉という。


高速中性子

大きいエネルギー値を持つ中性子を高速中性子という。
これに対し、小さいエネルギー値を持つ中性子が熱中性子だ。



黒鉛炉

黒鉛(炭素)を減速材に使用した原子炉を黒鉛炉という。
チェルノブイリ原子力発電所で使用された原子炉が黒鉛炉だ。



コンプトン効果

コンプトン効果とは、エックス線が電子に衝突すると、エックス線の波長が伸びる現象である。
電磁波が粒子としての性質を持つ証拠の一つである。



サ行

サイクロトロン

サイクロトロンとは、磁場を利用した加速器である。
荷電粒子は円軌道を描きながら加速する。



重水

重水とは分子中に重水素や三重水素を含む水のことである。
減速材に重水を利用するタイプの原子炉を重水炉という。



重水炉

減速材に重水を利用するタイプの原子炉を重水炉という。
重水炉では核燃料に低濃縮ウランを必要としない。

これに対し、通常の水を利用する原子炉を軽水炉という。
軽水炉には核燃料として低濃縮ウランを装荷する。



シンチレーションカウンター

シンチレーションカウンターは放射線を測定する計測器である。
放射線を受けると蛍光物質が発光する。これを光電子増倍管で測定する。



タ行

中性子

中性子とは、陽子と共に原子核を構成する素粒子の1つである。
水素の原子核(陽子1個のみ)以外の原子核は、陽子と中性子から構成されている。



中性子線

高速で移動する中性子の流れを中性子線という。
中性子は電荷がないため、電場の影響を受けない。
物質中を通過する中性子線は、原子核との衝突でのみ減速する。



超ウラン元素

ウランよりも原子番号の大きい元素を超ウラン元素という。
少数の例外を除き天然に存在しない。
このため、発見された超ウラン元素は、人工的に合成された元素である。



転換

天然ウラン精鉱(イエローケーキ)を六フッ化ウランに精錬するプロセスを転換という。
日本国内に転換の設備が無いため、電力各社は海外から転換済みウランを輸入している。
転換済みウランは国内の設備で濃縮ウランになる。



電子

原子核の周囲を取り囲んでいる粒子が電子である。
原子核は陽子、中性子から構成される



天然ウラン

自然界から産出されるウランを天然ウランという。
天然ウランに含まれるウラン235の比率は0.7%しかないため、そのままでは核燃料にはならない。
原子力発電では3〜5%程度の比率が必要である。
ウラン235の比率を上昇させる工程を濃縮といい、濃縮されたウランを濃縮ウランという。



電離作用

物質中を通過する放射線は、経路上にある原子の軌道電子をはじき飛ばす。
これにより、この原子は陽イオンと電子に分離され現象を電離作用という。
イオン化ともいう。


同位体

原子番号が同じで質量数が異なる核種を同位体という。
陽子の数は同じなのに中性子数が違うと解釈してもいい。
同位体のうち、放射能を持つ種類を放射性同位体、持たない種類を安定同位体という。



トリウム

トリウムは、原子番号90 の元素である。
トリウム系列はトリウム232から始まる崩壊系列である。


トリウム系列

トリウム系列は、トリウム232から始まり鉛208に至る崩壊系列である。
トリウム系列に属する核種は質量数を4nで表すことができる。このため4n系列ともいう。


ナ行

熱中性子

小さいエネルギー値を持つ中性子を熱中性子という。
これに対し、大きいエネルギー値を持つ中性子が高速中性子だ。



ネプツニウム

ネプツニウムは原子番号93の元素である。
超ウラン元素であるが、ネプツニウム239は天然にもわずかに存在する。
ネプツニウム系列はネプツニウム237から始まる崩壊系列である。


ネプツニウム系列

ネプツニウム系列とは、4つの崩壊系列のうちネプツニウム237に始まりタリウム205に至るまでの系列のことである。
4n+1系列ともいう。


ハ行

半減期

放射性原子核の数は原子核崩壊によって減っていく。
ある時点での放射性原子核の数が、崩壊によって半分になるまでに要する時間を半減期という。

半減期は放射性物質の種類のみに依存し、量や温度、圧力に影響されない。
つまり放射性元素はどこにあっても、環境の影響を受けず、決まったスピードで崩壊するのである。


反応断面積

反応断面積とは、核反応の起こりやすさの度合いを示す尺度である。


プルサーマル

プルトニウムをウランの核燃料に混合して分裂反応させる原子炉のこと。


プルトニウム

プルトニウムは原子番号94の元素である。
以前はウランの核反応によって生じる人工元素と考えられていたが、現在では微量ながら天然にも存在することが分かっている。


ベータ線

β線とは、β崩壊に伴い、原子核から放射される電子または、陽電子のことで、放射線の一種である。


ベータプラス崩壊

ベータ崩壊のうち、陽電子が放射されるものをベータプラス崩壊という。


ベータ崩壊

原子核がβ線とニュートリノ(および反ニュートリノ)を放出して、他の原子核になる現象をβ崩壊という。


ベータマイナス崩壊

ベータ崩壊のうち、電子が放射されるものをベータマイナス崩壊という。


崩壊系列

原子核が崩壊して他の原子核に変化しても、その原子核が不安定なら、さらに崩壊する。
不安定である限り崩壊が繰り返し、安定な原子核になったところで崩壊が終了する。
このような一連の崩壊の順序を崩壊系列という。壊変系列ともいう。


放射性核種

原子核崩壊を起こす原子核を「放射性同位体」または「放射性核種」という。
これに対し、原子核崩壊を起こさない原子核を「安定同位体」「安定核種」という。


放射性同位元素

原子核崩壊を起こす原子核を「放射性同位体」または「放射性核種」という。
これに対し、原子核崩壊を起こさない原子核を「安定同位体」「安定核種」という。


放射線

粒子線(高速な粒子)や電磁波の中には、電離作用を持つものがある。
これらを放射線と呼ぶ。
放射線にはいくつかの種類がある。

区分名称実体発生機構透過力
粒子線α線ヘリウムの原子核α崩壊に伴い、原子核から放射される極めて弱い
紙1枚で遮断できる
β線β-線電子β崩壊に伴い、原子核から放射される弱い
アルミ箔等の薄い金属で遮断できる
β+線陽電子
中性子線中性子原子核反応に伴い、原子核から放射される極めて強い
鉛や鉄も貫通するが、水で遮断できる
電磁波X線波長域10-12〜10-8[m]の電磁波高速の電子が金属に衝突し放射される強い
遮断には厚いコンクリートや鉛が必要
γ波長域10-12[m]以下の電磁波原子核反応に伴って原子核から放射される極めて強い
遮断には厚いコンクリートや鉛が必要

マ行

ミューオン

レプトンの一種。ミュー粒子ともいう。

ヤ行

陽子

陽子とは、中性子と共に原子核を構成する素粒子の1つである。
水素の原子核(陽子1個のみ)以外の原子核は、陽子と中性子から構成されている。
原子核に含まれる陽子の数がその原子の原子番号である。

陽電子

陽電子とは電子の反粒子のことである。
陽電子は正電荷を持つ以外、各物理量は電子と同一である。



ラ行

ラドン

ラドンは、原子番号86の元素で、常温常圧で無色無臭の気体である。


連鎖反応

1回の核分裂反応がきっかけとなって次の核分裂反応を引き起こし、核分裂反応が次々に起こっていく現象。


六フッ化ウラン

ウランとフッ素の化合物。常温常圧では固体であるが、約57℃で昇華し気体になる。
ウラン濃縮は、六フッ化ウランの気体を遠心分離器にかけることによって行う。


ワ行

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2007/11/15
2010/03/18



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