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考察

考察の書き方のコツ

最も苦戦するのが考察だ。
「何を書いたらいいのか分からない」というのが、だいたいの本音である。
ここで紹介する3つのコツで考えれば合格ラインに達するはずだ。

コツは次の三つだ。



実験の誤差要因

実験で得た値が理論値から大きく外れていたら、測定ミス・実験ミスがあったことになる。
理論値の通りだったら、測定ミス・実験ミスはなかったと判断できる。
ミスがあっても、なくてもそれぞれの観点で論じればいいのだ。



実験値が精度内に収まれば、「誤差要因を抑え込むことができた」とし、
実験値が精度から外れれば、「これら要因を抑え込むことができなかった」とすればいい。

レポート上での論の展開はこうなる。

考察

誤差要因はできるだけ書き出しておこう。
誤差要因の数だけ、考察のネタはあるのだ。



実験の種類によって誤差要因は異なるが、誤差要因には一般には次のようなものがある。

実験中の気温、実験中の湿度、気圧、装置の発熱、電源電圧の変動、実験機器を置く机の水平の度合い、視差、配線の長さ・巻き具合(抵抗値に影響する)、換気、試料の寸法・秤量の精度、ストップウォッチの操作の誤差、測定者のクセ、接触抵抗、室内のホコリ等。

[..誤差要因の考察についてさらに詳しく見る..]



グラフの形状

グラフの形状を見て理論値との差を考察する方法がある。
実験結果のグラフには、

がある。


グラフも実験の誤差要因と関連して考察すればいい。

理論通りのグラフが得られた場合:
「グラフのプロットを見ると一次の直線を形成することが確認できる。
このことから「スプリングの伸びx」と「加えた力F」は、比例の関係にあることが解釈できる。
一方、理論式F=kxは一次の直線であり、両者は比例関係にある。
従って、この実験で理論式が再現することを確認できた。」
(※丸写し、コピペは厳禁)

グラフが理論から外れた場合:
「「スプリングの伸びx」と「加えた力F」は、比例の関係になるはずだが、グラフはのプロットを見るとX=△△から一次直線から外れている。
このことからX=△△から実験が再現されていないことが確認できる。
その理由として、次のような要因が考えられる」
(※丸写し、コピペは厳禁)



グラフが理論通りであれば、「誤差要因を抑え込むことができた」とし、
グラフが理論から外れれば、「これら要因を抑え込むことができなかった」とすればいいのだ。

[..グラフの形状の考察についてさらに詳しく見る..]




実験の発展案

実験には目的があり、その目的を達成するための手段が実験である。
目的を達成するためには、別の実験であってもいいはずだ。
そこで、代替案を考察する。
ただし、実験の誤差要因がまともに考察されていないのに、代替案はあり得ない。
実験の実験の誤差要因をキチンと論じておいて、余裕があれば発展案を考察する。

例えば、「今回はボルダの振り子を用いて重力加速度を測定したが、代替実験として斜面を利用した測定方法も考えられる。ことなる二つの実験を併用することで精度をさらに確認することが可能になる。具体的には・・・・」 のように書けばいい。
(※丸写し、コピペは厳禁)

[..実験の発展案についてさらに詳しく見る..]




会話で分かる考察の書き方のコツ

テクニック1:実験の誤差要因について考察する

ある日の実験課題終了後のこと。

いつものように、実験グループでヒソヒソと考察のアイデア出しをやっていました。
そこへ、たまたま通りかかった大学院生が話しに入ってきたのです。

その日は、指導教員に急な出張が入り、代替にその院生が実験課題の指導にあたっていたのです。たぶん、ボクたちが考察で悩んでいることに気が付いて、話に入ってきたのでしょう。

院生はこんなアドバイスをくれました。


院生 「どんな実験でも、見込みを持って行っているはずだよね。 見込み通りにならなそうな要因を書き出し、その要因がどうだったかを論じればそれで考察だよ。」

ボク 「ちょっと、よく分かりませんが」

院生 「では、どんな見込みを持ってこの実験をやったのかな?」


ボク 「テキストの通りにやったのですけど・・・」


院生 「そうだね。"テキストの通りにやれば、うまくいくはずだ"という見込みを持っていたんだね。」

ボク 「まぁ・・・そうです。」


院生 「じゃ、実験をうまく行かせない要因って何だろうか?」



ボク 「・・・」


院生 「たとえば、実験中の気温の変化だ。装置の発熱も回路の抵抗値を変化させるよね」



ボク 「計測者の読み取りのクセとかもですか?」



院生 「そうだよ。そういった要因はすべて実験精度を邪魔しようとしている要因だ。実験精度を邪魔しようとする要因をリストアップし、それぞれが実験結果にどのように影響したかを個々に論じれば考察になるんだ。」



ボク 「確かにそうですが、今日の実験は、テキスト通りの結果、つまり見込み通りになりました。結局、実験精度を邪魔する要因は作用しなかったと思いますが。」



院生 「だからさ、"気温の変化"とか、"装置の発熱"とかの要因が考えられたけど、実験中は対策をうったので、これらの要因を押さえこめたと考察に書けばいいんだよ。」



ボク 「???? もう少し詳しく教えてください。」


院生 「実験はもともと、見込みを持ってやるものだ。その見込みの中には、実験精度を邪魔する要因も見込んでおく。さらにその要因もどう抑え込むかといった対策も見込めるはずだよね。
だから、実験結果が理論値通りであったら、 "コレコレの要因が考えられたので、コレコレの対策を打った。その結果、精度を確保できた。" と書けばいい。

反対に、実験結果が理論値から外れたら、 "コレコレの要因が考えられたので、コレコレの対策を打った。しかし、精度を確保できなかった。
精度を確保するために、今後はコレコレの対策を実施しようと考える" とすればいい。」

ボク 「・・・! では、実験がうまく行っても、行かなくても、同じように考察になるというわけですね!」



院生 「そうだよ。装置の発熱だって、装置を引き離し、実験中異常な発熱がないか適時手で触れて確認するのだって対策だ。
実験がうまく行けば、"適時触覚で確認したので、装置の異常発熱がなかったことは明白である"と考察に書く。
うまく行かなければ"適時触覚で確認したところ、装置の異常発熱が確認された。この異常発熱が実験結果に影響を与えた可能性が大きい"と考察に書けばいい。

もちろん、装置の発熱以外にも、実験精度を邪魔する要因はいくつもある。湿度の変化や、ケーブルの抵抗値、計測器のドリフト、ネジの締め具合もだよね。こられについて個々に実験への影響を論じれば、考察のネタには困らないよね。」



ボク 「確かに、その通りです。でも、実験前にそこまで見込みを考えてないですよ。」



院生 「それが、本音とタテマエの違いだよ。もし、今の話を実験前に知っていたら、きっと事前にアレコレ要因やその対策を考えたはずだよね。さも、実験前から見込みを持っていた振りして考察を書けばいいんだよ。」



ボク 「とても参考になりました。ありがとうございました。」

[..実験の誤差要因についてさらに詳しく..]



テクニック2:グラフの形状について考察する

1か月ほどして、院生がまた実験の指導に来ました。

この1か月の間に、3回の実験がありましたが、アドバイスの通りに進めたことを報告しました。
院生 「みんな考察は難しいというけれど、ポイントをつかめば簡単でしょ。」



ボク 「ハイ。」


院生 「理論値と実験値を比較するということで考えれば、グラフを比較してもいいよね。グラフも"こういう形のグラフになるはずだ"という見込みをもって実験しているはずだからね。」


ボク 「いや、・・・そこまでは・・・。」

院生 「いいんだよ。タテマエなんだから。実験で得られたグラフが、グラフの見込みの形・位置からどの程度ずれているかを論じても考察になるよね。」



ボク 「見込み通りだったら、"xとyが比例関係にあることが確認できた"などと書けばいいのでしょうか?」


院生 「そうだよ。見込みからずれていたら、"コレコレの理由でずれた"と論じればいんだ。結局見込み通りであっても、そうでなくても考察になるんだな、これが。」


ボク 「なるほど!」


院生 「よく、グラフが理論値からずれた要因のみを考察する人がいるよね。グラフの形状をずらす要因はすべて書く。この要因のなかでコレとコレによってグラフがずれた。アレとアレは影響しなかったと書けばいい。ポイントは、ずれる要因をすべてピックアップすることなんだ。」


ボク 「結局、誤差の要因と同じように考察すればいいんですね!」


院生 「ときどき、実験が上手く行き過ぎて考察のネタがなくなったという人がいる。見込みからずらす要因を考えれば、実験が上手くいっても失敗しても考察のネタに不足はないんだ。」

[..グラフの形状についてさらに詳しく..]



テクニックの奥義:レポート採点の基準を知る

このあと、院生はレポート採点の基準を教えてくれました。


院生 「実験レポートでは、どれだけ理論を分かっているかで採点しているんだよ。」


ボク 「実験レポートを見ただけで、理解の度合いはわかるのでしょうか?」


院生 「そりゃ、指導教員には分かるよ。このことも実験レポートは形を変えたテストだと考えれば、理解しやすいよね。」


ボク 「テストなんですか?」


院生 「そうだよ。よく、自由論述式のテストで"△△について論ぜよ"という出題形式があるだろ。論述させて、そのテーマをちゃんと理解しているかどうかを試すんだ。
考察も、自由に論述させて、その実験テーマをちゃんと理解しているかどうかを試しているんだよ。普通のテストと違うのは、自宅でやっていいのと、参考資料も見放題だってことだね。」


ボク 「・・・。わかったような気がしますが・・・・。考察はテストの一種ということですか。」


院生 「例えば、ヤング率の測定の実験をやったとする。考察は"ヤング率の測定結果について論ぜよ"という論述問題だと思えばいい。この場合、採点者はどういう視点で採点するかな?」


ボク 「実験の原理を正しく把握しているか、などですか?」


院生 「それもある。でもそれだけだったら、実験のテキストを写せばできてしまうので採点にならない。
また、"正しい値が得られているか"といった基準でも採点しない。実験のテキストの参考値を丸写しすればいいんだからね。 "実験の結果・進め方が妥当かどうかを、実験者自身が検討できているか"を見て採点するんだ。」


ボク 「そうなんですか!」


院生 「実験の結果・進め方を検討するという視点で考察を書けば、採点者は点数を付けやすいよね。」


ボク 「それは、そうですが・・・。」


院生 「"実験の見込みを持つ""実験精度を邪魔する要因をピックアップする"といったことは、"実験の結果・進め方を検討する"の第一歩なんだよね。"実験精度を邪魔する要因"は実験テキストのどこにも載っていない。"実験精度を邪魔する要因"がどの程度実験結果に作用したかを論じるということは、"実験者自身が検討できている"ことの証だよね。指導教員は採点しやすいよね。」


ボク 「なるほど、そうすると、さきほどのグラフの形状も"実験者自身が検討できている"ことの証になりますね。」


院生 「そうだよ。実験の中身を十分に検討していないと、グラフの形状は論じられないよね。だから、グラフの形状を論じていると、指導教員は採点しやすいんだ。」


ボク 「なるほど、そうだったのですね。」


院生 「もちろん、これ以外にも採点の基準はあるよ。"論理立てて矛盾なく書かれているか"なども採点基準だよね。でも、"実験の結果・進め方が妥当かどうかを、実験者自身が検討できているか"はウエイトが高い。採点時に重要視されているんだ。でも"実験精度を邪魔する要因"をピックアップすれば、そんなに難しいことではないはずだ。」


ボク 「はい、そうです。」


院生 「教員がどんな視点で考察を採点するかを考えれば、いい考察も書けるはずだ。今回の考察も、そんな調子でうまくやってよ。」


ボク 「いろいろ、ありがとうございました。」




考察を書くためのタテマエ

最後に考察を書くためのタテマエも知っておこう。
考察は、もともと仮説・実験計画・実験実施等の実験プロセスの妥当性や誤りについて、検討する場だ。
考察チャート

(このチャートの意味については、「実験による検証のプロセス」参照)



考察は、仮説・実験計画・実験実施等の各実験のプロセス毎に論じればいい。
プロセス毎の考察の対応方法を以下に示す。

実験プロセス実験課題の現実考察の対応・ポイント
仮説真理を仮説に見立てている。
仮説の誤りを考察する余地はほとんどない。
考察では、グラフの形状を論じて、仮説が妥当であることを確認する。

考察の優先度は第2位
具体的な考察の書き方は「グラフの形状」参照
実験計画テキストで指定されている。
計画の誤りを考察する余地はほとんどない。
考察では、同じ目的を達成するための代替の実験方法を検討する。

考察の優先度は第3位
具体的な考察の書き方は「実験の発展案」参照
実験実施実験者のスキル・知識に依存する。
ここを重点的に考察する。
考察では、実験が妥当であったかを検討する。

考察の優先度は最優先
具体的な考察の書き方は「実験の誤差要因」参照






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