物理学解体新書

考察の書き方

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考察のコツ2:グラフの形状

実験プロセスの妥当性や誤りについて、検討する場が考察である。
しかし、実験課題は真理を仮説に見立てているので、「真理が本当に妥当であるのか」を考察する余地はない。
そこで、考察の第2のポイントは、グラフの形状を見て、真理が再現されているかを確認することである。

例えば、バネ定数を求める実験では、「スプリングの伸びx」と「加えた力F」のグラフを描く。
このときのグラフは、理論式からF=kxとなる。
そしてグラフの傾きから、バネ定数kを求めるのだ。

このとき、グラフを見て以下のように考察する。
「グラフのプロットを見ると一次の直線を形成することが確認できる。
このことから「スプリングの伸びx」と「加えた力F」は、比例の関係にあることが解釈できる。
一方、理論式F=kxは一次の直線であり、両者は比例関係にある。
従って、この実験で理論式が再現することを確認できた。」
(※丸写し、コピペは厳禁)

この実験で、弾性限界を超えて力を加えると、グラフは直線からずれる。
スプリングが塑性変形してしまうからだ。
グラフを見て、塑性変形を開始する限界荷重を以下のように論じることができる。
「グラフを見ると荷重○○Nを境に、プロットが直線からずれていることが確認できる。
このことから荷重○○Nが弾性限界であることが読み取れる。
実験に使用した試料(サンプルNo12)は、塑性変形したので永久ひずみが残り、バネ本来の機能を消失したと判断できる。
しかし、弾性限界内のグラフのプロットは塑性変形以前に測定したものであるので、実験値としては有効である。」
(※丸写し、コピペは厳禁)

さらには、実施していないことも論じることができる。
「今回の実験では、荷重○○Nまでしか加えていないが、さらに加えた場合、荷重△△N付近で、降伏点が出現すると予測できる」
「高温下で長時間荷重を加えると、金属はクリープを起こす。その場合のグラフは下図のような形状になると予測できる」
ただし、本来考察すべき事項をキチンと論述することが先である。
実施していないことに言及するのは、その後である。

上記から、グラフに言及する場合のポイントは以下に集約することができる。
(上ほど優先度が高い)
・グラフの形状から理論式を確認できたと論じる
・理論式から外れる部分は、その値を明示した上で物理的な要因を論じる
・このまま測定する範囲を広げたら、グラフがどういう形状になるかを論じる
・他の環境(高温/高圧/低温/低圧)で同様に実験したら、グラフがどういう形状になるかを論じる

要は「グラフを見たら、理論が確認できました」「このように実験したら、グラフはこうなるはずだ」ということを細かに記述すればいいのである。

科学は理論と実験の両輪で進展する。
未知の現象を測定してグラフを描き、その形状から理論を導く。
理論の延長から現象を予測して実験で検証する。
グラフの考察は、要領よく考察を書くテクニックだけでなく、科学のプロセスの縮図でもあるのだ。


■次のページ:考察のコツ3:実験の発展案

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2005/09/04



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