エネルギー
エネルギーとは
質量mの物体を、重力に抗して手で高さhだけゆっくりと持ち上げるときの仕事はmghである。
余談 |
この物体にかかる重力はmg、これに逆らう手の力は重力に等しいのでmgである。 |
この物体が手に加える力はmgだ。
この物体を載せたまま、手をゆっくり降ろした場合、物体が手にmghの仕事をすることになる。
では、質量mの物体を、高さhに留めたまま降ろさなかったらどうなるか?
移動させていないのだから仕事はゼロである。
しかし降ろすことによってmghの仕事をする可能性はある。
この物体は「仕事をする可能性」を持っているのだ。
仕事をする可能性にある状態を、エネルギーを持つという。
エネルギーの大きさは為しうる仕事の大きさで表現する。
mghの仕事をする可能性があるので、この場合のエネルギーはmghだ。
さて、この物体をhだけ降ろしたとしよう。
このとき、降ろしていく過程で物体が手にmghの仕事をする。
しかし降ろし終わるともう仕事をする可能性はなくなる。
mghのエネルギーを持っていた物体が、mghの仕事をしたために、エネルギーはゼロになる。
物体がある状態で持っているエネルギーは、その状態を失うことによってなされる仕事に等しい。
等しいということは仕事もエネルギーも同一の単位を使用しているということだ。
「仕事」も「仕事をする可能性」も同じ[J]で表現する。
このため、仕事とエネルギーを混同する人がたまに見られるが両者は別物である。
エネルギーにも形態よりいろいろある。
位置エネルギー、運動エネルギー、熱エネルギー、電気エネルギーなどだ。
エネルギーがどのような形態であっても、仕事をする可能性を持っていることには変りがない。
エネルギーごとに、仕事を取り出しやすい・取り出しにくいが違うだけである。
ここで例示したものは位置エネルギーである。
各エネルギーについては、その他のエネルギーを参照して欲しい。
落下物はなぜ危険なのか
頭上から落下してきた物体が、人に直撃し死傷事故に至る場合がある。
落下物は危険なのだ。
落下物が地面に衝突し、地表にめり込んだとする。
落下物は力を与えながら、土をどかした(移動した)のだから、仕事をしたことになる。
仕事をする可能性をエネルギーという。だから落下中の物体は、エネルギーを持っていたことになる。
落下物に限らない。水平方向に走る自動車が、壁に衝突しこれを壊すのもエネルギーを持っていたからだ。
しかし、停止している自動車が壁を破壊することはできない。
物体は速度を持つことによって、エネルギーを持つ。
これを運動エネルギーという。
運動エネルギーUkは以下の式で表す。
落下中の物体は落下速度や質量に応じた運動エネルギーを持つ。
落下物が、人間に直撃すると、人体組織(骨、臓器)に仕事をする。
余りにも軽微なもの(ピンポン玉等)が、近距離から直撃しても、その運動エネルギーは小さい。
だから弾性などに消費されてしまえば、もう使いきってしまうので、危険ではないのだ。
危険なのは、落下物だけではない。
高所にあって、いつ落ちてもおかしくないものも同様に危険なのだ。
物体は高い位置にあるというだけで位置エネルギーを持つ。
「いつ落ちてもおかしくないもの」とは「位置エネルギーが、運動エネルギーに変わりやすい状態にある物体」という意味だ。
ここでは、落下物を例にして、位置エネルギーと運動エネルギーを概観した。
位置エネルギー
高さhにある質量mの物体はmghの「仕事をする可能性」を持つ。
これを位置エネルギーという。
質量mの物体がグラグラと今にも落ちそうな状態であるか、また絶対に落ちないように安全に固定されているかは関係ない。
グラグラしてようが安全であろうが、その高さがhであれば位置エネルギーはmghなのだ。
つまり、高い位置にあるというだけで、エネルギーを持っているというわけだ。
保存力は始点と終点の位置関係のみで仕事が決まる力であった。
重力は保存力なので、物体の移動による仕事は途中の経路に無関係ということになる。
だから、位置エネルギーの大きさは、「高い位置」と「低い位置」の2点間の「高さの差」だけで決まる。
高い位置や、低い位置は重力の作用によって生じる概念だ。
無重力空間の宇宙では、「高い」「低い」の区別はない。
重力の作用しない場所では、2点間に位置エネルギーは成立しないのである。
位置エネルギーなど、保存力の場の中にあって、位置だけで決まるエネルギーを総称してポテンシャルエネルギーという。
この場合の「位置」とは、重力場における「高さ」に限定されないことに注意しよう。
バネ弾性力は保存力である。
バネの伸縮にともないバネの端部の位置も変化する。
バネの端部の物体も、位置エネルギーを持つことになる。
位置エネルギーを特に、ポテンシャルエネルギーと呼ぶことがある。
保存力には様々な種類があり、すべて位置が定義できる。
これらをポテンシャルエネルギーと呼ぶ。
上記のバネ弾性の位置エネルギーもポテンシャルエネルギーの一種である。
重力における位置エネルギーは、ポテンシャルエネルギーの代表例ではある。
しかし、重力における位置エネルギーがポテンシャルエネルギーと同義語ではない。
保存力の場で、ポテンシャルエネルギーと運動エネルギーの和は常に、一定となる。
これを力学的エネルギー保存の法則という。
運動エネルギー
ある速度で移動する物体Aが、静止している物体Bと衝突する。
衝突の勢いでBが移動する。
ということは物体Aが物体Bに仕事をしたということになる。
衝突直前の物体Aは、仕事をする可能性を持っており、衝突によって、仕事をしたのだ。
つまり、物体Aはエネルギーを持っていたことになる。
運動する物体もやはりエネルギーを持つのだ。
このエネルギーを運動エネルギーという。
運動エネルギーは「質量」「速度の二乗」に比例する。
(ただし、並進運動での話。回転運動や変形運動の場合の運動エネルギー別の式になる)
運動エネルギーと運動量との違いに注意しておきたい。
運動エネルギーは、エネルギーの一形態であり、運動する物体が持つ「仕事をする可能性」を示している。
一方で、運動量は物体の動く勢いと方向を表すベクトル量だ。
速度が3倍になれば、運動量も3倍になる。
しかし、運動エネルギーは9倍になる。速度の2乗に比例するからだ。
保存力を受けて、速度が変化する場合、運動エネルギーと位置エネルギー(正確にはポテンシャルエネルギー)の和は常に一定となる。
これを力学的エネルギー保存の法則という。
力学的エネルギー保存の法則が成立するのは、保存力を受けて運動する場合だ。
摩擦力など非保存力の作用で速度が減じても力学的エネルギーは保存しない。
その他のエネルギー
エネルギーは様々な形態がありうる。
つまり、仕事をする可能性は様々なパターンがあるということだ。
すでに解説した位置エネルギー、運動エネルギーとともに各エネルギーを示そう。
| エネルギー | 説明 | |
| 静止エネルギー | 物質は存在するだけでエネルギーを持つ。 質量とエネルギーは等価である。 E=mc2 例:原子力発電、原子爆弾 詳細は原子核物理学参照。 |
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| 力学的エネルギー | 運動エネルギー | 移動している物体は速度に応じたエネルギーを持つ。 E=(1/2)mv2 |
| ポテンシャルエネルギー | 保存力の作用する場で、物体の位置によって物体が持つエネルギー。 重力場でのポテンシャルエネルギーを特に位置エネルギーという。 E=mgh |
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| 電気エネルギー | 電気を流すことによって、モーターが回転したり、電灯が点燈する。 流れる電流は仕事をするのだ。 P=IV 例:電灯、ヒーター |
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| 熱エネルギー | 熱は仕事をする。 1cal=4.19J 例:蒸気機関 |
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| 化学エネルギー | 化学結合はエネルギーを持つ。 これが化学エネルギーだ。 化学エネルギーは化学反応によって熱や光として出入りする。 例:電池、燃焼 |
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| 光エネルギー | 光は波長に応じたエネルギーを持つ。 その大きさは振動数νとプランク定数hの積である。 E=hν 例:光電効果 |
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2005/08/27
2009/06/21
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