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エックス線技術入門[3]

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エックス線(X線)のスペクトル

波長の分布の状態をスペクトルという。
例えば、虹がスペクトルの例だ。
赤から紫までの各波長の光が分布しているのが虹なのだ。


太陽光も様々な波長の光で構成されている。
太陽光を見て、肉眼では個々の波長に分解できないが、プリズムを使用すると虹と同様なスペクトルを見ることができる。
赤から紫までの各波長が合成されて、太陽の光(白色光)が成り立っているのである。


エックス線(X線)は肉眼には映らないが、多くの波長で構成されていることができる。
もし、プリズムがエックス線(X線)をスペクトルに分解すことができ、人間の目で見ることができたら、エックス線(X線)による虹が出現することになる。(これはたとえ話なので、実際にはあり得ない。)


プリズムを使用することはできないが、特別な装置を使えば、エックス線(X線)を波長ごとに分解することができる。
つまりエックス線のスペクトルを調査できるわけだ。
発生したX線のスペクトルを調べると、2種類のエックス線(X線)が存在することが分かる。


その2種類を白色X線、特性X線という。


白色X線と言っても、白く見えるわけではない。
白色X線には、多くの波長が含まれている。


すべての波長を含む太陽光を白色光と言っているのに対比して、すべての波長を含むエックス線(X線)を白色X線という。
このため「白色」という表現を使用しているにすぎない。
電子がターゲットで急減速し、放射されるエックス線(X線)は白色X線である。


可視光が様々な波長を含む場合、その光は白く見える。
白色光は、様々な波長を含んでいるのだ。


これに対し、特定の波長がけが限定して放射されるエックス線(X線)が特性X線だ。
電子が衝突すると、原子核の周囲の電子が弾き飛ばされ、電子殻に空席ができる。


原子核の周囲では、原子核に近いほうが「よい席」だ。
原子核を取り囲む電子はなるべく「よい席」を取りたい。
だから、席は原子核に近い席から埋まっていうのだ。


原子核に近い席の電子が弾き飛ばされると、外側の席の電子は、少しでも「よい席」に近づこうと急いで空いた席に移動する。
つまり、内側の空席を埋めるために、外側の電子が移動してくるのだ。


移動前と移動後の電子のエネルギーの差が、特性X線となって放射されるのである。


電子の軌道のエネルギーの差は一定なので、放射されるX線の波長も一定となる。


可視光線の中には、赤い光や青い光がある。
可視光線の色の違いは、波長に違いに起因する。
つまり、可視光線は波長によって、性質が変化するのだ。


可視光線と同様に、X線も波長によって異なった性質を示す。
これを「線質」という。線質とは可視光線でいう色の違いに相当する。
物質を透過しやすいX線を「硬いX線(硬X線)」、透過しにくいX線を「やわらかいX線(軟X線)」と呼ぶ。


一般に硬いものは、他のモノを貫通しやすく、やわらかいものは貫通しない。
硬いX線(硬X線)、やわらかいX線(軟X線)は、一般事象から来た比喩の表現である。

■次のページ:エックス線(X線)の作用

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2008/01/05



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