物理学解体新書

電子殻

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電子殻

原子は、中心となる原子核とこの原子核を取り巻く電子によって構成される。
電子殻とは、「電子が原子核を取り巻く様子」を言い表した言葉である。


原子の構造が解明される以前、電子は原子核の周囲を軌道にそって公転していると予測されていた。
ちょうど、太陽を公転する惑星のイメージを原子に当てはめたと言っていいだろう。
この世に微視の世界を支配する法則「量子力学」が潜んでいるとは、誰も気がつかなかった時代だったので、電子は惑星同様にニュートン力学に従って運動すると思われていた。


量子力学が成立すると、電子は粒子のようでもあるが、同時に波のようにも振舞うことが分かった。
電子は粒子でもあるが、一方で波動でもあるのだ。
当然、ニュートン力学は通用しない。


惑星の軌道運動はニュートン力学で計算できる。
数年後の何月何日に火星がどこにいるかは、計算によって厳密に位置を知ることができる。
だからこそ、探査機を飛ばすことができるのだ。


ところが原子核の周囲の電子の動きは、計算で厳密に求めることができない。
厳密に求めることはできないが、計算によって電子が存在する確率を知ることはできる。
量子力学の計算によって、電子は「原子核から○○nm離れた位置にいる確率は○○%である」というように算出される。


ニュートン力学の計算答えとして「物体の存在する位置」が求まる。
量子力学の計算答えとして「電子の存在する確率」が求まる。


電子の位置がズバリ分からないのは、今日の科学が未熟だからではない。
微視の世界では「電子は確率としてしか存在できない」という法則があるからだ。
これは、電子が元々もっている法則なので、今後どんなに科学が進歩しようと電子の位置を厳密に特定することはできない。
電子はハナっから厳密な位置など持っていないのだ。


当然、原子核の周囲の電子の位置も確率でしか分からない。
原子核からある距離に電子が存在する確率は極めて高いが、少し離れると存在確率は少なくなる。


原子の存在する確率の高い部分ほど濃く色を塗っていくと、原子核を取り囲む雲のような絵ができる。
(実際にそんなことはできないが) ある瞬間、原子を見たとき色の濃い部分に電子がいる可能性は高いが、色の薄い部分に電子がいる可能性はほとんどない。


このような電子が確率的に存在する領域は、球殻状に原子核を取り囲んでいる。
この球殻状の電子の分布を電子殻という。
電子殻は、「電子が原子核を取り巻く様子」と表現してもいいだろう。


電子殻は、層構造となって原子核を取り囲んでいる。
原子核に近い側からK殻、L殻、M殻、N殻、O殻、P殻、Q殻と命名されている。


それぞれの電子殻には、「主量子数」と呼ばれる番号が割り当てられている。
K殻はn=1、L殻はn=2、M殻はn=3、N殻はn=4のように、原子核から離れるにつれ、主量子数は「1」づつ増加していくのである。


各電子殻には定員が決まっている。
K殻には2個、L殻には8個、M殻には18個までの電子しか入れないのだ。


例えば、5人乗りの乗用車に6人乗ることは可能である。
(走らなければ法的に問題ない)
しかし、電子殻の定員は厳密に守られている。
M殻の定員は18個であるため、19個以上の電子をM殻に入れることは不可能なのだ。
これをパウリの排他原理という。


各電子殻の定員数と主量子数nには、2n2の関係がある。


量子力学の軌道はニュートン力学での軌道と意味も概念もまるで違う。
混乱を避けるために量子力学的な軌道をオービタルと呼ぶ場合がある。
これは、英語ではニュートン力学での軌道をorbit (軌道)、量子力学での起動をorbital(軌道のようなもの)と表現を分けていることの影響である。

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2007/06/21



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