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原子核崩壊

原子核崩壊とは

「原子は物質の根本単位でそれ未満に分割できず、永久不変である」と考えられていた。
しかし、20世紀に入ったころから、この考えは怪しくなった。



現在では「原子は物質の根本単位ではなく、それ未満の要素から構成される。原子核は崩壊によって他の原子核へと変化する」と認識されている。



すべての原子核が崩壊するのではない。
崩壊する原子核と崩壊しない原子核がある。
それぞれ、「放射性同位体」「安定同位体」と呼ぶ場合が多い。



原子核は核力によってまとまっている。
しかし、中性子数と陽子数のバランスによっては、核力によって原子核を維持することが難しい。
このような原子核は、非常に不安定なのだ。
このため、中性子と陽子の数の組み合わせの適切でない原子核は、時間の経過とともに放射線を出して他の原子核へと変化する。



放射線を出して、他の種類の原子核に変化することを原子核崩壊といい崩壊する原子核を放射性同位元素という。
崩壊は外からの働きかけがなくても自然に発生する。



「崩壊」といっても原子核がバラバラに分解し、原子核でなくなってしまうのではない。
他の種類の原子核に変わるだけだ。



崩壊を起こす原子核はみな大きな原子核のみと思われている場合があるが、そうではない。
たとえば炭素の同位体14C(炭素14)は放射性同位体である。




放射線

電磁波または粒子線(高速な粒子)のうち、直接又は間接に空気を電離する能力をもつものがある。
これらを放射線と呼ぶ。
放射線にはいくつかの種類があるが、実体や発生機構は異なる。

区分名称実体発生機構透過力
粒子線α線ヘリウムの原子核α崩壊に伴い、原子核から放射される極めて弱い
紙1枚で遮断できる
β線β-線電子β崩壊に伴い、原子核から放射される弱い
アルミ箔等の薄い金属で遮断できる
β+線陽電子
中性子線中性子原子核反応に伴い、原子核から放射される極めて強い
鉛や鉄も貫通するが、水で遮断できる
電磁波X線波長域10-12〜10-8[m]の電磁波高速の電子が金属に衝突し放射される強い
遮断には厚いコンクリートや鉛が必要
γ波長域10-12[m]以下の電磁波原子核反応に伴って原子核から放射される極めて強い
遮断には厚いコンクリートや鉛が必要



ウランやラジウム等の原子は放射線を継続して出していることが確認されている。
この放射線を継続して出す能力を「放射能」という。



報道などでは「放射能が漏れた」等の表現を用いているが、これは誤用だ。
放射能は能力なので、能力が漏れるとは本来意味を成さない表現である。
「放射能を持つ物質が漏れた」と表現するのが正しい。



なお、すべての原子が放射能を持つのではない。
不安定な原子核が、放射線を出すのだ。
上表で示したように放射線にはいくつかある。
その中で不安定な原子核から自然に出る放射線には以下の3種類がある。




放射線の名称放射線の実体核種の変化質量数
α線Heの原子核原子番号が2つ減る4減る
β線高速な電子原子番号が1つ増える変化しない
γ波長の短い電磁波変化しない変化しない



ここでのポイントは「原子は永久不変ではない」ということだ。
α線やβ線を放射することにより、他の原子へと変化するのである。
このことを原子核崩壊という。なお、γ線を放射しても原子核は崩壊しない。



α線、β線については「原子核崩壊」で詳説するので、ここではγ線について説明しよう。



原子核に蓄えられたエネルギーをγ線として放射するのがγ崩壊だ。
原子番号、質量数ともに変化はしない。
つまりγ線を放射しても原子核は崩壊しないのだ。



波長が10-12mよりも短い電磁波をγ線という。
エックス線よりもエネルギーが大きいということだ。




半減期

原子核の崩壊は確率現象だ。
確率現象なので、ある放射性原子核を一つもってきて「この原子核は、今日の○時○分○秒に崩壊する」と断言できない。



しかし、同じ種類の原子核が多数あれば、「この原子核の集団のうち、今日の○時○分○秒の時点で約○○○個程度が崩壊する」と論じることは可能である。



つまり、ある特定の原子核が崩壊するタイミングを、理論的に予測することはできないが、たくさんあれば予測することができるということだ。
まさに確率現象の特徴といえる。



これはサイコロに似ている。一個のサイコロを振る場合、出る目を理論的に予測することはできない。(あてずっぽうで、予想することは可能だが、理論的な予測ではない)
しかし、6万個のサイコロを振れば、約一万個が1の目となると理論的に予測することができる。これと似ている。



あるタイミングで崩壊する原子の数量は、そこにある原子の総数に比例する。
ここにある放射性原子があり、時刻tのときにその総数がNであるとしよう。
この場合、次の瞬間に崩壊する原子核の数dNは次のようになる。
dN=-λNdt
これを積分すれば、
N= N0e-λt



このλを崩壊定数という。放射性物質に固有の数値だ。
崩壊定数は放射性物質の種類のみに依存し、量や温度、圧力に影響されない。
つまり放射性元素はどこにあっても、環境の影響を受けず、決まったスピードで崩壊するということだ。



放射性原子の数量が、崩壊によって半分になるまでに要する時間を半減期という。
半減期を求めるのは簡単だ。N= (1/2)N0として代入すればいい。
計算すると
T=0.693/λとなる。



崩壊定数の逆数1/λを平均寿命という。
初めにあった放射性原子の数量は1/ eになるまでの時間ともいえる。



繰り返しになるが半減期や平均寿命は、環境によらず一定である。




崩壊の種類

不安定な原子は崩壊する。
しかし、勝手気ままに崩壊するのではない。



崩壊には2つのパターンがある。α崩壊β崩壊だ。
これ以外のパターンで崩壊することはない。



これら崩壊はすべて放射線を伴う。

放射線核種の変化質量数
α崩壊α線(Heの原子核)原子番号が2つ減る4減る
β崩壊β線(高速な電子)原子番号が1つ増える変化しない



α崩壊

α線を放出する崩壊をα崩壊という。
陽子2個、中性子2個から構成される核子のカタマリをα粒子という。
これはHe(ヘリウム)の原子核のことである。α粒子が高速で放射されたものをα線という。



α崩壊とはHeの原子核を吐き出す崩壊と言ってもいい。



ここはポイントだ。Li(リチウム)やO(酸素)、Ne(ネオン)など他の原子核を自然に吐き出す崩壊はない。
また陽子2個、中性子2個以外の組み合わせを吐き出すこともない。
常に陽子2個、中性子2個の4個一組で放出するのだ。



これはHe(ヘリウム)の原子核が非常に安定しており、維持されやすい組み合わせであることを意味している。(橋元淳一郎氏はご自身の著書でこれを「仲良し4人組」と表現しており、非常にイメージが掴みやすい。)
崩壊ではHe(ヘリウム)の原子核以外の形で核子が放出することはありえないのだ。



α崩壊では、陽子2個が失われる。つまりα崩壊とは、原子番号が2つ小さい原子に変化する崩壊である。
α崩壊は重い元素に特有の崩壊である。
理科年表を参照すると、α崩壊を起こす核種は質量数200以上の同位体であることが分かる。(数個の例外もあるが)




β崩壊

β線を放出する崩壊をβ崩壊という。
β線とは原子核から放出される高速の電子だ。
原子核を取り巻く電子ではない。
原子核内部から電子が放射されるのだ。



原子核は陽子と中性子から構成されるはずなのに、この電子は原子核のどこにいたのだろうか?



この電子は中性子の中にいたのだ。
中性子はその名の示す通り電荷は中性だ。
その中性子から負電荷を持った電子が放出されるので残った中性子は正電荷を帯びることになる。



正電荷を帯びればこれはもう中性子ではない。陽子だ。中性子がβ線を出して陽子に変化したのだ。



中性子と陽子は核子の種類ではない。核子が正電荷を帯びた状態が陽子であり、電荷をない状態が中性子なのだ。



さて、中性子が陽子に変化したということは、原子番号が一つ増えたことになる。
原子番号が異なれば、それはもう別の原子ということになる。
β崩壊とは原子番号が1つ大きい原子に変わる崩壊である。



なお、β崩壊時に中性子から放出されるのは電子だけではない。
ニュートリノという中性の素粒子も同時に放出される。




原子・原子核用語も参照してください。



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2005/06/18/

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