物理学解体新書

コラム

HOMEコラム>金星

金星

夕方、明るく輝く星を西の空に見ることがある。
これが宵の明星だ。
それが金星だと知らなかったとしても、宵の明星を見たことのない人はまずいないだろう。


朝早ければ、東の空に明けの明星を見ることもある。
これも金星だ。
金星は、最も多く目撃されている(地球以外の)惑星でもあるのだ。


明けの明星は、夜明け前に東の空に現れ、日の出とともに見えなくなる。
宵の明星は、夕方西の空に現れ、すぐに沈む。
金星が姿を見せるのは、薄明時のわずかな時間だけだ。


薄暗い空で、ひときわ輝く金星には品位があり、神秘を感じる。
古来より、大抵の文明が金星に対し、肯定的なイメージを持ってきたようだ。
西洋では美の女神「ビーナス」の名を金星に与えている。


金星は地球より内側の軌道を回る惑星だ。
だから、地球から見れば、金星は太陽から遠く離れることはない。
夜中に見えないのも当然だ。


米国や旧ソ連によって、いくつかの探査機が投入され、金星の素顔が明らかになってきた。


大気の主成分である二酸化炭素が温室効果を引き起こす。
このため、地表気温は500℃に達するという。
荒れ果てた地表には地球大気の90倍の気圧がかかり、ガスが濃く、視界は数メールにも及ばない。
高度5万メートルの上空は濃硫酸の雲で覆われ、やむことのない暴風が荒れ狂う。


宇宙航空研究開発機構(JAXA)には、2008年に金星探査機を打ち上げる計画がある。
その目的は、金星の気象を解明し、地球の気象メカニズムの理解に寄与させようとするものだ。この分野を惑星気象学という。


金星で起こっている温室効果は凄まじい。
人々は探査機の映像を通して、自分たちが どれほど地球を危機に追い込んでしまったかを肌で感じることができるかもしれない。


金星の世界は、灼熱地獄と呼ぶにふさわしい。
そこには、美の女神など、居るはずもない。

■次のテーマ:混ぜるな危険

このページのTOPへ



スポンサーリンク

2005/08/30



スポンサーリンク

Amazon.co.jpアソシエイト



スポンサーリンク

Amazon.co.jpアソシエイト