物理学解体新書

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メートル

長さや重さを測る場合、基準とする量を「単位」という。
例えば2.5mといった長さは、メートルという単位の2.5倍の長さであることを意味している。


単位は万国共通で使用するのが好ましい。
もし世の中の単位が、バラバラだったら大変だ。
長さや重さを比較するとき、都度換算しなくてはならない。


大昔は権力者が交代するたびに単位が変わったり、地域ごとに違ったりで、商取引や記録に大きな負担が伴った。
単位の根拠も、歩幅や腕の長さを基準にしてたりで、決して合理的とは言えない。
「標準的な単位を決めて、各国で使いましょう」と言い出したのは、革命さなかのフランスであった。


標準的な単位にするためには、歩幅や腕の長さに依存してはならない。
フランスは、合理的な単位の根拠として「地球のサイズ」を利用した。
「地球一周の4千万分の1を1メートルとする」と決まったのは1795年のことである。
これをメートル法と呼ぶ。
※正確には「パリを通過する子午線の北極点から赤道までの距離の千万分の1」


1メートルの長さが具体的に決まると、各国に「1メートルの長さ」を具体的に示さなくてはならい。
フランスは「1メートルの長さ」を示す道具をプラチナで製作した。
これをメートル原器という。
メートル原器の両端に刻印された印と印の間隔が1メートルなのだ。
メートル原器は当時最高の技術を動員しており、その精度は1千万分の1である。


メートル原器は長さの基準である。
メートル原器をもとに、物差しなどの「測る道具」が作られるのだ。
物差しで、メートル原器の長さを測ったら、ズバリ1メートルにならなかったとする。
その場合、その物差しが狂っているのだ。


1875年には、メートル法の国際統一を目的にメートル条約が締結された。
メートル条約加盟国には、メートル原器(の複製)が配られ、各国での長さの基準にされる。
日本も1886年(明治19年)にメートル条約に加盟し、No22のメートル原器(の複製)が配布された。


軍人は金銭を話題にするのは卑しいとされていた。
やむなく金額を言葉にしなくてはならない場合、苦し紛れに「1メートル、2メートル」と言い換えた。
ここから、酒代が増えること、飲酒量が増えることを「メートルが上がる」と表現するようになった。
メートル法が国内に普及してきた時期のエピソードである。


技術が発展すると、開発や研究の現場では、より高精度の測定が必要になってくる。
やがてメートル原器の精度では限界に達し、代わって「クリプトン(という元素)が出す波長」をメートルの基準にすることになった。
1960年がメートル原器引退の年である。


1983年には、精度向上のため、再びメートルの基準が見直された。
「光が真空中を299792458(約3億)分の1秒間に進む距離を1メートルとする」
これが現在の「1メートル」である。






単位」も参照してください。





参考文献

伊藤幸夫, 寒川陽美「よくわかる最新単位の基本と仕組み」秀和システム,2005年


参考サイト

独立行政法人産業技術総合研究所
ウィキペディア

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2005/09/05



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