作用反作用の法則(第3法則)
例えば、机の表面を手で押すとしよう。
押す力を強めるほど、手が感じる力は大きくなる。
これは、手が机を押すと、机も同じ大きさの力で手を押し返すからだ。
この場合、手が机を押す力を「作用」、机が手を押し返す力を「反作用」という。
作用と反作用は、大きさは等しく方向が正反対の力のペアなのである。
ここでは、机と手の関係を例示したが、
・ボールが壁に衝突する場合
・バネを伸縮させる場合
・引力や電磁気力で物体同士が引き合う場合
なども作用と反作用のペアの典型例である。
作用と反作用のペアが成立するのは特別な場合ではない。
作用と反作用のペアは力のあるところすべてに成立するのである。
これを「作用・反作用の法則」という。
つまり、力は単独では存在できない。
常にどんな力でも、作用と反作用がペアとなって存在するのである。
作用・反作用の法則はニュートンの運動法則の第3法則である。
押せば同じ力で押され、引けば同じ力で引かれる。
これが作用反作用の法則である。
手が机を押す例では、机は動かないから納得しやすいが、台車をゴロゴロ押す場合などは迷う。
台車を押とき、手は、力を感じる。
これは、台車が手を押し返している証拠だ。
このとき「台車を押す力」と「台車が手を押し返す力」は等しい。
ところが台車は押されて動いて行くから「台車を押す力の方が大きい」と誤解しやすい。
「台車を押す力」と「台車が手を押し返す力」は、作用・反作用で常に等大逆向きなのだ。
では、等大逆向きの力でつりあうはずなのに、どうして台車は動くのかという疑問もある。
この疑問は、力のつりあいと混同している。
「力のつりあい」と「作用・反作用」は別ものなのだ。
人間は靴底の摩擦を使って歩く。
台車の車輪にも地面との間に摩擦がある。
靴底の摩擦力が、車輪の摩擦より大きいから台車が押されて動くのだ。
そして、台車を押している限り、手と台車の間に等大逆向きの力が生じているのである。
非常に重い台車を力をこめて押そうとしている場合をイメージすると理解しやすい。
この場合、腕に相当な力がかかるが、同時に踏ん張っている靴底にも力を感じるはずである。
この靴底の力と等大逆向きの力が、車輪にも摩擦力として生じている。
台車は、靴底と車輪の摩擦力の差で移動するのである。
また、摩擦が極端に小さい靴底を想像してもいい。(台車の車輪は普通に摩擦する)
台車を押しても、ツルツルと靴底が滑り、台車を前に進ませることができない。
台車を押す力は同じでも、靴底に摩擦がないから進まないのである。
繰り返すが「力のつりあい」と「作用・反作用」を混同してはならない。
作用・反作用の法則の疑問
力は単独では存在できない。常に等大逆向きの力とペアになって存在するのである。
これが作用・反作用の法則である。
この「等大逆向きの力がペア」がクセものであり、理解しにくさ・分かりにくさの原因になっている。
ここでは、作用・反作用の法則に関して次の3つの疑問を解き明かすことにする。
なぜ、綱引きで勝負がつくのか?
綱引きも、綱を引き合う両チームの間で作用・反作用が生じている。
もちろん、等大逆向きの力だ。
では、等大逆向きの力で引き合うのに、なぜ勝負がつくのか?
もし、綱引きをスケートリンクの上で行ったらどうなるか?
靴の裏側がツルツルすべって、どちらのチームも「綱は引けるが、後ろに引っ張れない」状態になるだろう。
綱全体はどちらの側にも動かず、勝負はつかない。まさに等大逆向きの力が加わっているからだ。
今度は、一方のチームの足元がステートリンク、他方のチームの足元がグラウンドだとする。
このハンデは明らかだ。グラウンド側のチームが圧勝することだろう。
ステートリンク側のチームは綱を引くことはできても、足を踏ん張ることができない。
このため、相手方へスルスルと引きずられてしまうのだ。
ステートリンク側のチームの敗因は綱を引く腕力が劣っていたからではない。
足を踏ん張るための摩擦力が無かったからだ。
通常、綱引きは両チームともグラウンド上で行われる。
靴底の摩擦力は、チームのメンバーの体重や靴底の面積、土の状態で違いがでる。
両チームが綱を引く力は作用・反作用により等大逆向きであるが、足を踏ん張るための摩擦力の違いで有利になったり、不利になったりする。
綱引きは、靴底の摩擦力の差で勝負がつくのだ。
綱引きは「力比べ」ではあるが、腕力を比べているのではない。
靴底の摩擦力を競う競技なのだ。
力士と子供が押し合っても等大逆向きなのか?
力士と子供が正面から突き合った場合、勝負は明らかだ。
力士はビクともしないのに、子供は弾き飛ばされてしまうだろう。
この場合も作用・反作用の法則によって、「力士が子供を押す力」と、「子供が力士を押す力」は、同じ大きさなのである。
つまり、「力は等大」なのだ。
これは日常の感覚では、理解しにくい。
「力士の力が圧倒的に大きい」と考えるのが常識だからだ。
作用・反作用の法則で「力は等大」なのに、なぜ勝負が着くのであろうか?
この子供と力士の勝負が宇宙空間で行われたと考えよう。
宇宙空間は、重力や空気抵抗がないため、物体の運動の性質が単純化できるのである。
突き合った瞬間に、子供は後に勢い良く飛ばされるが、同時に力士も反動でゆっくりと後退する。
宇宙では慣性の法則が顕著に表れるのでこの状態は継続する。
力士と子供は、それぞれのスピードを保ったまま、お互いに離れていくのである。
「子供のスピード」は「力士のスピード」よりも速い。
このスピードの違いは、力士と子供の質量の違いによって生じる。
突き合った直後から、子供と力士は離れていくが両者の運動量は保存される。
つまり
「子供のスピード」×「子供の質量」=「力士のスピード」×「力士の質量」
の関係が保たれるのだ。
(ちょっと乱暴だが、「速い」×「軽い」=「遅い」×「重い」と思えば直感と合う)
子供が10kg、力士が100kgだとすれば、質量の比は10倍だ。
だから、子供は力士の10倍のスピードで飛ぶことになる。
ここで注意すべきは、宇宙では「力士も10分の1のスピードで飛ぶ」ということである。
地上の勝負では力士はビクともしないように思えるが、重力や空気抵抗がなければ、力士も突き合いの勝負で後にゆっくりと(10分の1のスピードで)動くのである。
質量は動きにくさの指標でもある。(慣性質量という。)
力士の質量は子供の10倍もあるので、動きにくさも10倍なのだ。
これを地上の勝負にもってくると、この傾向は著しい。
質量が大きければ地面との摩擦抵抗も大きくなる
質量差で10倍も動きにくい上、摩擦抵抗も加算されるので、なおさら力士は動きにくいことになる。
力士と子供は、突き合いで同じ多きさの力を受ける。
子供か軽い(質量が小さい)ので、簡単に動いて(弾き飛ばされて)しまう。
しかし、力士は重い(質量が大きい)ので、動いたようには見えないのだ。
力士と子供の突き合いで力士が圧勝するのは、「力士の質量が大きいから」である。
決して「力が強いから」ではないのだ。
空気を蹴り続けても反作用で上昇できないのは何故か?
なぜ、空気を蹴っても反作用でジャンプできないのか?
地面を蹴れば、反作用でジャンプできる。
空気を蹴っても同様に反作用はあるはずだ。
しかし、空気を蹴ってもジャンプできないのは何故だろうか?
空気を蹴り続ければ、上空まで上昇できるはずである。
この問題は、
「走れば、空気とぶつかって、人間は後ろに弾き飛ばされるはずだ」
と本質は同じである。
「空気を蹴ってジャンプできない」や「空気とぶつかっても、弾き飛ばされない」は「人間にとって、空気の反作用は無視できるほど小さい」ことに依存する。
同じ体重(正しくは質量)、同じ体格の人間A、Bが、走ってぶつかれば、お互いに後に倒れるだろう。
ところが同じ体格であっても、Bの体重が著しく軽かったら、Bのみ後に倒れ、Aはよろける程度となる。
さらに、Bの体重が空気なみに軽かったら、Bは弾き飛ばされるが、Aは衝突の衝撃を感じることもないだろう。
これは、ピンポン玉と鉄球の衝突でも同じことが言える。
ピンポン玉と鉄球の衝突したとき、作用・反作用の法則によって、それぞれが相手から受ける力は等大だ。
ところが、運動量保存の法則によって、鉄球はそのままだが、ピンポン玉は弾き飛ばされる。
鉄球はピンポン玉より重い(質量が大きい)ため動きにくいからだ。
衝突によって受ける力は同じであるが、衝突後の動きは質量によって違ってくる。
質量の小さいもの(軽いもの)は動きやすいので弾け飛び、質量の大きいもの(重いもの)は動きに影響を受けにくいのだ。
同じ大きさの力を受けながら、ピンポン玉は簡単に弾かれ、鉄球は動きにくいのである。
ピンポン玉と鉄球の関係は、空気分子と人間の関係に置き換えることができる。
空気を蹴れば、空気分子と足は、作用・反作用の法則で逆向き・等大の力を受ける。
空気分子の質量は圧倒的に小さいので、足とぶつかると簡単に弾け飛んでしまうのだ。
もちろん、足も空気分子から同じ大きさの力を受ける。
しかし、足の質量は圧倒的の大きいので、この程度の力では動きが影響されないのである。
このため、空気を蹴っても、空気が反作用で簡単に動いてしまうので反動を得ることはできない。
だから、空気を蹴って空を飛ぶことはできないが、空気と衝突してケガをすることもないのである。
なお、自動車等のスピードが速い場合、単位時間に衝突する空気分子の数が多くなる。
これが風圧である。
風圧は空気との衝突による反作用の現れでもある。
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